妊娠14週で〝破水〟するなんて…23週4日に生まれた604gと552gの命 10人に1人が「小さく生まれた赤ちゃん」

生後15日、552gで生まれた弟は638gになりました。むくみで体重は増減しますが、1gでも2gでも体重が増えることがうれしく、成長を信じていました
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こんにちは。朝日新聞記者の河原夏季です。朝日新聞のニュースサイト「withnews」で、「小さく生まれた赤ちゃんたち」という連載を不定期で続けています。
このニュースレターでは、隔週の土曜日に小さく生まれた赤ちゃんを出産したお母さんたちのお話や、小さく生まれた赤ちゃん自身の「その後」のお話など、取材で伺ってきたストーリーや、アンケートに寄せられた思い、小さく生まれた赤ちゃんへのサポートなどをつづっていきます。
私自身、4年前に1000g未満の小さな赤ちゃんを出産した母親で、入院中は体験記や記事、論文、関連する情報をあさっていました。
当時、ブログやSNSで同じ境遇の人を見つけることはできましたが、まとまった情報があまりなく、もっと体験談を知りたい・知ってもらいたいと思ったことが連載を始めたきっかけでした。
特に求めたのは、小さく生まれた赤ちゃんの「その後」の情報、どのように成長しているかという「未来」でした。不安で押しつぶされそうだった当時、息子たちが育っていく様子はまったく想像できず、1年先、2年先、できれば小学校、中学校、高校……と情報を探しました。
もちろん小さく生まれてもそうでなくても、成長発達のスピードは赤ちゃんそれぞれで違います。それは分かっていても、小さく生まれた赤ちゃんがどのように成長しているのか、誰かのケースを知ることで救われたり、心構えができたりしました。
後日、日本では2500g未満で小さく生まれる赤ちゃん(低出生体重児)がおよそ10人に1人いることを知りました。人口動態統計によると、2023年は約7万人の赤ちゃんが2500g未満で生まれています。「10人に1人って、意外とひとごとではないのでは?」。そんな疑問を持ちました。

そういえば、友人や知人が出産したときに赤ちゃんの体重や出生週数を聞いたことはありませんでした。わざわざ伝えることでもないですし、聞く側もそこまで考えないと思います。
ですが、振り返ってみると数人の友人・知人から切迫早産(早産の一歩手前の状態)になったという話を聞いたことはありました。息子を出産して以降は、保育園のママ友から「うちも小さく生まれたよ」と聞いたり、大学の後輩に「自分も早産で生まれました」と打ち明けられたりするようになりました。
604gと552g 仮死状態で生まれてきたふたり
初回は2021年4月、妊娠23週4日(妊娠6カ月)に、帝王切開で双子の男の子を出産した私の体験をご紹介します。
赤ちゃんは604gと552g、身長は約30cm。足を曲げているとペットボトルと同じくらいの、両手に収まる大きさです。当時、妊娠記録をまとめていたアプリには、「グレープフルーツくらいの『重さ』だよ」と記されていました。
本来であれば出産予定日は8月。初期の妊婦健診で、「双子は早産の心配があって、産休に入る前に入院もあるかもしれません」と言われていましたが、まさか約4カ月も早い出産になるなんて想像もしていませんでした。
「早産」についてきちんと理解していなかったのです。
通常赤ちゃんは妊娠37週以降だと体の機能が十分に成熟しているといわれ、37~41週(正期産)で生まれます。出生時の平均体重は約3000gで、平均身長は約48cm。早産と呼ばれるのは「22週0日~36週6日」での出産です。
新生児仮死状態で生まれたふたりはすぐに蘇生され、NICU(新生児集中治療室)へ運ばれていきました。「生きているのか」「大丈夫なのか」「急変しないか」。会えない時間は不安との戦いでした。
出産した翌日から面会へ行きました。「触ってあげてください」と医師や看護師さんたちに勧められ、おそるおそる保育器のなかへ手を伸ばしました。
ふたりの腕は人差し指くらいの太さで、手のひらは人差し指の第一関節くらいの大きさ。頭は軟式野球ボールと同じかそれより小さく、ふにゃふにゃ。皮膚は真っ赤で、ガリガリでした。口やへその緒には治療のための管が何本もつなげられています。
私が退院するまで毎日、数十分から1時間ちょっと面会するのが日課でした。保育器の中で一生懸命生きている姿を見るたびに、「親が弱気でいちゃダメじゃないか」と励まされていました。
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