見過ごされてきたミックスルーツ当事者のメンタル不調 必要なサポートは
アンケートを企画・実施したのは、米カリフォルニア大学客員研究員(国際社会学)の下地ローレンス吉孝さんと、トロント大学博士課程(社会福祉学)の市川ヴィヴェカさんです。
アンケートでは、複数の民族や人種にルーツを持ち、日本で1年以上暮らしたことがある成人を対象に、オンライン上で計448人から回答を得ています。
このアンケートからは、ミックスルーツの人々をめぐる実態が明らかになりました。回答者の98%がマイクロアグレッション(偏見による日常的な差別)を経験したことがあり、7割ほどが「1ヶ月以内に1度以上経験している」という結果もあり、自殺未遂を経験している割合が一般の調査と比べて「2.1倍」という深刻な状況もわかっています。
ミックスルーツをめぐる差別について公的な調査はなく、対策も後手に回っている現状があります。
下地さんと市川さんが「まずは実態が広く知られてほしい」と呼びかけるこの調査について、あらためて振り返っていきたいと思います。
マイクロアグレッション、9割以上が経験

マイクロアグレッションの経験(左グラフ:全448人、右グラフ:全417人)=アンケート報告書から
マイクロアグレッションについては、回答者の98%が「経験した」、68%が「1カ月以内に1度以上経験」と答えました。
その具体例は、「何人(なにじん)?」「日本語上手ですね」と言われるなど、日本人であることを否定されるような言動や、「黒人と友達になりたい」と言われたり、電車で見知らぬ人から髪の毛を触られたりといったものも。
ほかにも、ある店員が他の日本人客には敬語で話しているのに、自分に対してだけタメ口になった事例や、携帯ショップで態度が雑で、見下しているような接客をされたという回答もありました。
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- 7割がいじめ・差別を経験 ルーツや肌の色への侮辱も
- メンタル不調は一般の5倍 アイデンティティーに関する悩みも
- 自殺未遂の経験は一般の2倍「疎外感ひどく」
- 孤立感の割合は一般の2~3倍「同じようなルーツを持つ人がいない」
- 3割が不登校を経験 背景に劣等感も
- 3割がサポート不十分 相談でマイクロアグレッションも
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